欧州航路で紅海航行回避、大手船社の今後の対応は?

欧州への航路は紅海を避け喜望峰周りに

2024年1月時点で、紅海ではフーシ派による商船への攻撃が繰り返されています。フーシ派はイスラエルによるパレスチナ自治区ガザ侵攻に抗議するため、イスラエル向けの貨物や商船を狙っていると主張しています。

2023年12月中旬には、大手船社であるMSCやCMAなどが紅海を避け、代わりに喜望峰を経由することを発表しました。その後、アメリカを中心とした多国籍の海軍部隊が船社を護衛し紅海を安全に航行させるとの声明があり、一部船社で紅海航行が再開されました。しかし、現実にはフーシ派の攻撃を完全に防ぎ切れていないようです。
なお、紅海航行の全ての船舶が攻撃されているわけではなく、石油タンカーやロシア、中国の船は航行できているようです。

この記事では、各船社の紅海航路への対応を、2024年2月10日時点までの情報をもとにまとめていきます。

船社各社の対応(報道ベース)

以下は2024年の2月15日時点までに報道されている各船会社の紅海航路への対応をまとめたものです。

船会社紅海航路関係の報道1/23時点の対応
CMA・CGM・紅海航路は一時停止し喜望峰ルートへ変更を発表(2023/12/16)
・紅海航路は部分的に再開(2023/12/26)
・欧州とオーストラリア間の週1便の運行を喜望峰周りに変更(2024/1/19)
※CEOコメント「フランス軍艦の護衛あれば一部再開」
当面回避
COSCO・紅海航路は部分的に再開(2023/12/26)
・イスラエルへの輸送を停止(2023/1/9)
・2月の紅海向けサービス休止(2023/1/23)
当面回避
マースク・紅海航路を当面見合わせる(2023/12/16)
・紅海航路は部分的に再開(2023/12/26)
・コンテナ船が攻撃を受ける((2024/1/1)
・コンテナ船の紅海航行を当面停止、喜望峰周りに変更(2024/1/2)
当面回避
ハパックロイド・スエズ運河周辺の船舶は迂回を29日まで継続(2023/12/27)
・スエズ運河周辺の船舶は迂回を15日まで継続(2024/1/9)
・スエズ運河周辺の船舶は迂回を22日まで継続(2024/1/15)
※迂回の期間については定期的に公表している模様
当面回避
マースク・紅海航路を当面見合わせる(2023/12/16)
・紅海航路は部分的に再開(2023/12/26)
・コンテナ船が攻撃を受ける((2024/1/1)
・コンテナ船の紅海航行を当面停止、喜望峰周りに変更(2024/1/2)
当面回避
ONE・運航本船のスエズ運河経由および紅海区域の航行取りやめ、航行ルートを喜望峰経由へ変更、もしくは航海を一時停止(2023/12/20)当面回避

2024年2月時点の報道によると、ほとんどの船社が紅海を回避しているようです。紅海の安全が確保されるのはいつ頃になるのか、まだ全く見通しが立たない状況で、当面は喜望峰経由が続くと予想されます。

この状況が続くと、注目を集めるのはアフリカ大陸の出入り口であるモロッコのタンジェ港です。 喜望峰経由のコンテナ船が増加することで、近年物流ハブ港として整備が進められてきたタンジェ港の需要は一層高まるでしょう。

また、紅海封鎖が長引く場合、現在未整備とされるアフリカ大陸の陸路輸送プロジェクトが進展する可能性もあり、これは今後のアフリカの物流にも大いに影響するでしょう。

いずれにせよ、しばらくは紅海での混乱が予想されます。
そして、紅海のスエズ運河だけではなく、パナマ運河も水不足による通行制限で停滞が続いています。くしくも世界の2大運河が同時期に混乱しているため、アジアと欧州間の物流に関する懸念はしばらく続きそうです。