主要船社の新造船発注残から今後の運賃を予測する

船腹数が増えれば運賃は下がる!?

輸送運賃はさまざまな要因で決定されますが、シンプルに考えるとスペースに余裕があれば運賃は下がり、余裕がなければ運賃は上がると考えられます。
このスペースの有無は貨物需要と船腹量と配船スケジュールで決まってきますので、発注残や直近の新造船竣工スケジュールは今後のスペース状況、輸送運賃の今後がどうなるかの指標になります。
今回は2023年の運賃がどうなるかを考えつつ、主要船社の船腹量を見ていきましょう。

主要船社の船腹量と発注残について

主要船社の船腹量についてはフランスの調査会社アルファライナーが常時ランキング形式で公表しており、以下は2022年12月19日時点の上位8社の船腹量と発注残です。

Rank船社名Total
TEU(船数)
自社保有船
TEU(船数)
傭船
TEU(船数)
発注残
TEU(船数)
自社保有船に対する発注残数の割合
1MSC4,576,395TEU
(712隻)
2,070,562TEU
(411隻)
2,505,833TEU
(301隻)
1,742,474TEU
(125隻)
38.1%
2Maersk4,253,539TEU
(711隻)
2,535,579TEU
(345隻)
1,717.960TEU
(366隻)
374,013TEU
(31隻)
8.8%
3CMA3,385,156TEU
(597隻)
1,586.989TEU
(229隻)
1,798,167TEU
(368隻)
687,457TEU
(80隻)
20.3%
4COSCO2,870,627TEU
(467隻)
1,567.588TEU
(176隻)
1,303,039TEU
(291隻)
884,272TEU
(46隻)
30.8%
5Hapag-Lloyd1,782,486TEU
(248隻)
1,111,411TEU
(120隻)
671,075TEU
(128隻)
379,354TEU
(21隻)
21.3%
6Evergreen Line1,637,861TEU
(208隻)
927,663TEU
(127隻)
710,198TEU
(81隻)
489,922TEU
(51隻)
29.9%
7ONE1,527,159TEU
(203隻)
787,587TEU
(90隻)
739,572TEU
(113隻)
184,027TEU
(30隻)
27.4%
8HMM818,067TEU
(76隻)
555,866TEU
(37隻)
262,201TEU
(39隻)
184,027TEU
(17隻)
22.5%

主要8社の発注残を見るとMaersk以外の船社で既存の自社保有船数の20%以上発注していることがわかります。
この発注残は2023年竣工のものだけではないので、今すぐというわけではないですが、来年夏頃から数年にかけて「新造船のラッシュ」が起こると考えられます。

もちろん実際は廃船数を加味する必要があるので、発注残数がそのまま自社保有船数に上乗せされると考えるのは早計ですが、全体的に船腹量が20%ほど増えると考えると相当なスペースができそうです。

実際には船腹数が増えてスペースができても各社が配船をコントロールするので運賃が急激に下がるということはありませんが、貨物需要を上回るスペースとなれば、あとは各社で貨物の取り合いとなり、運賃は下がるのではないかと予想できます。

ちなみに上記を見ると現状船腹量が1位のMSCの発注残が一番多く、また中古買船でも隻数を伸ばしており、当面1位に君臨し続けそうだと予想できます。
次回は各社の廃船スケジュール、注目されているLNG燃料船の割合などを調査予定です。