今後の中東方面の物流について

中東方面の物流の今後について

2023年11月、パレスチナ自治区ガザにおいて、イスラエルとイスラム組織ハマスとの衝突が激化しており、この状態が続く場合は中東方面への物流にも影響が生じる可能性があります。

今回は中東の主要なコンテナ港と物流の動向について考察します。

ここまでの中東ニュース2023

まず、2023年の中東のニュースで注目すべき出来事をまとめました。

2023.2スーダンの港にロシア海軍基地建設の協定の審査を終えたと報道
(スーダンはアフリカですが、紅海に面しているので記載します)
2023.3サウジアラビアとイランが国交正常化を発表
2023.4OPECプラスが加盟国の追加減産を発表。原油価格高騰へ
2023.4スーダンでクーデター。ロシア海軍基地の協定は不透明に?
2023.5イランとロシア、ラシュト~アスタラ間の鉄道建設で合意。ペルシャ湾からロシアへ貨物輸送が可能に!
2023.6スーダン、アメリカ、サウジアラビアの仲介で72時間の停戦発表
2023.6サウジアラビアがロシアから石油を2月から大量購入。原油価格の下支えが狙いか?
2023.8OPECプラスが2024年末までの減産方針維持を発表
2023.8イラン、サウジ、UAEらが来年からBRICSに加盟すると発表。BRICS+に
2023.9イスラエルがサウジアラビアとの国交正常化へ向け協議。アメリカが仲介
2023.10ハマスがイスラエルを攻撃。大規模衝突始まる
2023.10サウジ、イスラエルとの正常化交渉を凍結と発表
2023.10日本除くG7の6カ国首脳、イスラエル支持を表明
2023.10イラン大統領パレスチナ支援に参入と表明。ハマスを支持する姿勢と報道
2023.10スーダン、イランとの国交正常化を発表。サウジアラビアが仲介

この一連のニュースから、今年の中東はアメリカの減産要請に対する中東の減産拒否やサウジアラビアの原油購入についての記事が目立ちます。また、イラン、サウジアラビア、UAEがBRICSに加入する決定が、中東の経済圏における変化を示しています。

そして、イスラエルとサウジアラビアで国交正常化の協議が行われると発表され、いよいよ中東がひとつにまとまるのではという段階で、ハマスがイスラエルを奇襲攻撃し、衝突がはじまりました。

実際のところ、ハマスの意図はイスラエルとサウジアラビアの国交正常化を阻止するためだったかどうかは不明ですが、2023年10月の時点では国交正常化の協議は凍結となったと報道されています。

気になるのは今後この衝突が激化してしまうのかどうかです。

紛争激化で懸念されるのはスエズ運河よりもホルムズ海峡

地図を見ると、イスラエルガザ地区はスエズ運河に近接していますが、スエズ運河自体はエジプト内にあるため、直接的な問題は発生しないでしょう。ただし、今後の不確実性から、「WAR RISK CHARGE(戦争リスク料)」が上昇する可能性が高いと思われます。
それでも「スエズ運河封鎖!欧州へはコンテナ運べません」というような大きな制約はないと考えられます。

一方、懸念されるのは紅海ではなく、ペルシャ湾とホルムズ海峡の地域です。イランがパレスチナ支援を表明しており、アメリカがイスラエルを支援した場合、イランが対抗措置としてホルムズ海峡を封鎖する可能性が取りざたされています。

ホルムズ海峡は多くの中東諸国が原油輸出の主要航路として利用しており、封鎖されると原油価格の高騰が避けられません。特に日本のように原油輸入に依存する国にとっては、ホルムズ海峡の封鎖は深刻な問題です。

実際、日本の原油輸入の約8割はホルムズ海峡を経由しているので、封鎖期間が長引けば、石油不足となり、トイレットペーパーの品切れ等「令和のオイルショック」と称されることが予想されます。
G7首脳会議で日本だけがイスラエル支持を表明しなかったのは、こうした背景があることが考えられます。

今後、中東の情勢はどうなるのでしょうか。物流面では、5月のニュースで「イラン、ロシアでラシュト~アスタラ間の鉄道建設で合意」というのが気になるところです。
(ホルムズ海峡を封鎖してもペルシャ湾から陸路でロシアを経由して欧州に原油輸出する手段も??)

引き続き、中東情勢と物流についてレポートしていきます。