米西海岸港湾労使交渉が及ぼす貨物滞留のリスクについて

米経済にも直結。注目される米西海岸港湾の労使交渉の動向。

米西海岸港湾の太平洋海事協会(PMA)と国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)の労働協約は2022年7月1日に失効となりました。これはもともと2019年に失効予定だったものを2022年7月1日まで3年間延長していたもので、今回は延長ではなく失効とし、労使交渉をして新たな労働契約を締結する模様です。
この労使交渉は5月12日から始められており、7月1日の失効と同時に新たな労使契約を締結するのが理想的なスケジュールでしたが、7月末時点でも未だ交渉中となっております。

過去を振り返ってみると、この労使交渉は基本的に長引くことが多く、2014年に行われた労使交渉では契約失効後から新たな契約を締結するまでに一年以上を要しました。
交渉が長引くと、ストライキ等の懸念もあるので、コンテナスペースや輸送運賃にも影響を及ぼすと考えられます。

ストライキが起これば米国西海岸全港同時ストップ!?

ILWUは米国西海岸29港の労働者の組織なので、そのうち1つの港でストライキやロックダウンが起こった場合は29港すべてがストップすると言われています。
実際に2002年の労使交渉では、9月29日から10月9日まで29港でロックダウンが実施されました。
ロックダウンになると貨物が滞留し、滞船発生など、港は混乱状態となります。それが米西海岸港湾29港で11日間も続いたということは国内外に与えた影響はかなりのものであったと考えられます。

このロックダウンは長引く労使交渉に痺れを切らした労働者側がストライキこそ起こさなかったものの、故意に港での作業を遅らせる「スローダウン戦術」をとったことに経営者側が対抗した処置と言われています。
経営者側にとっては11日間のロックダウンによる損失は少なくないものの、「スローダウンによる非効率な状態での港運営を続けるよりはロックダウンをした方が負担が少ない」だと判断したようです。

米西海岸港湾の労使交渉は今夏中に決着する?それとも??

労使交渉が決裂し港がロックダウンされるようなことがあれば経済に与えるダメージが非常に大きいので、労使交渉が長引きそうな場合は早期締結のために米政府が介入すると言われています。

現状、8月時点の報道によると労使双方の当事者は「ストライキやロックダウンの準備はしていない」としていますが、巣ごもり需要による貨物増加による労働時間の増加や、港の混雑緩和のための整備が行われているとは言えない状況が続いていることなど、労働者側は多くの是正を要求するのではないかと予想できます。
対して、経営者側は先行き不透明な状況での賃上げ、インフラ整備には慎重だと考えられます。
過去の労使交渉の期間をみると、夏中に決着するというよりは「早くて年内」という見方が妥当だと思われます。

当然、労使交渉なので労使双方の主張に隔たりがあればストライキ、港のロックダウン等が起こる懸念があります。
そして、港の封鎖は貨物滞留の要因となるのです。

果たして、米西海岸港湾の労使交渉は早期に決着するのか。決裂してストライキが起ってしまうのか。
米西海岸港湾の労使交渉が今夏注目されているようです。