新造船受注量から読み解く今後の海上輸送と運賃について

世界の新造船受注量の推移を見れば今後の海上輸送が見えてくる

海上輸送で最も欠かせないものといえば当然「船」です。今後貨物が増えそうだと予想すれば船会社は造船数を増やし、逆であれば造船数は減らすでしょう。最悪なのは「船は作ったが荷物がない」「荷物はあるけど船が足りない」といった状況なので、各社の造船計画はもっとも慎重に今後の市場を予測したものとなっているはずです。
そして年間の造船受注量は各船会社の造船計画が集約したものであり。世界全体の造船受注量を見れば貨物市場の今後を先読みすることができるのです。

2021年の世界の新造船受注量は前年の2倍!?

「世界の新造船受注量の推移」については日本船舶輸出組合が統計データを公開しております。過去5年間の世界の新造船受注量は以下のとおりです。

■世界の新造船受注量の推移(対象は100総トン以上の船舶)

隻数万総トン
2017年1,432約4,320万総トン
2018年1,608約5,040万総トン
2019年1,600約4,400万総トン
2020年1,400約4,120万総トン
2021年1,858約8,100万総トン
※2020年までの数値は日本船舶輸出組合「造船関係資料」より抽出
※2021年分は報道されている速報値から算出

年間の造船受注量の推移をみると2021年は増加傾向にあります。コロナ禍で貨物需要の低迷が懸念されていましたが、昨年よりいわゆる「巣ごもり需要」で貨物需要は回復。今後も貨物需要は堅調だと考えられているようです。

また、 2018年にIMOが採択した「GHG削減戦略」に対応した船に作り替えていく必要もあるので、2021年以降もしばらくは造船受注量は増えそうだと予想されます。

コンテナ船は長距離・域内航路双方で運用できる7000TEU型新造が人気?

なお、実数は発表されていませんが、直近のニュースをみていると貨物用の新造船は7000TEU型、8000TEU型が人気のようです。
完全に長距離運用というわけではなく、向け地の港の状況によってはトランシップでの輸送用として、またはアジア域内サービスで重宝するタイプの船です。
おそらく今後も起こりうる大都市港の混雑による滞船リスクを回避しようとする流れが考えられます。

造船量から読み解く今後の運賃について

船が増えるということは貨物のスペースがふんだんに供給されるということです。現状高騰している運賃もスペースが空くようになれば徐々に下がってくる可能性もあります。
ただし、基本的に船が完成するまでは3年程度はかかると鑑みると、2019年、2020年と新造船受注量が低迷していた影響で当面はスペースタイトな状況が続くのではないかと考えられます。