上海ロックダウンが与えた海上物流への影響

2022年3月28日、新型コロナウイルスの感染拡大によるロックダウンが上海でスタートしました。上海港自体は封鎖されたわけではありませんが、ロックダウンによる港の人員不足、トラック不足で荷捌きが遅延し滞船が発生、スペースタイトな状況が続いていました。
この上海ロックダウンは2022年6月1日に解除されましたが、それにより海上物流はどのような影響を受けるのでしょうか。
今回はロックダウン後の海上物流の動向を予想してみました。

上海ロックダウン中に起こった事

今回のロックダウンによって、上海港では多い時には100隻以上もの滞船が起こっていたと言われ、上海への輸送運賃も高騰していました。ロックダウン中は生産量が減り、輸出輸入量ともに減少していましたが、それ以上に港の人員も減少しているため、荷捌き不良となっていたようです。大まかな滞船と運賃高騰の流れは以下だと考えられます。

  • ロックダウンで港の労働者の絶対数が減少し、荷捌き遅滞状態となる。
  • トラックも不足し、港から工場・倉庫への陸送 / 工場・倉庫から港への陸送も遅れる。
  • ロックダウンによる配送不可の貨物が港に貯まる。
  • 港(ヤード)にスペースがなくなり、船から荷下ろしができない。
  • 荷下ろしが完了するまで出港できず、滞船が起こる。
  • 港が混雑し入港できなくなり船費がかさむ為、運賃があがる。

ロックダウン解除でこれから起こる事

ロックダウンが解除されても、上海港の混雑はしばらく続くと予想できます。それはロックダウン解除により停滞していたサプライチェーンが復活し、上海港から世界の港への輸送量も増えていくと考えられるからです。もちろん港の労働者は戻りますが、その以上に物流量が増えるので混雑は続くというわけです。
さらにその後は向け地の港が混雑、運賃高騰状態が続くかもしれません。ロックダウン解除後の各港の大まかな状況は以下ようになると予想できます。

  • ロックダウン解除で港の労働者、トラック不足も解消される。
  • 停滞していたサプライチェーンも再開し、上海港の物流量が増えるため港は混雑。
  • 引き続き滞船も発生し、ロックダウン解除後の輸送運賃も高騰維持。
  • 上海からの荷が増えることにより、他港も混雑。
  • アメリカ西海岸の港等、もともとコロナ禍で混雑していた国の港はさらに混雑。
  • 円安ドル高状態が続き、日本からの輸出量も増加。
  • 滞船が多く発生し、輸送運賃は高騰維持。さらに高騰する恐れあり。
  • 中国出し貨物の運賃が再び上昇し、日本出し貨物の運賃も値上げが懸念される。

そもそも港のインフラを整備しないの?

「物流量が増えて港が混雑するなら、人員を増やしたりして、インフラ整備すればよいのでは?」と考えられますが、そう簡単にはいきません。
インフラ整備に踏み出せない理由としては今後は「物流量が減少する」懸念があることがあげられます。
そもそも、近年はウイグル問題やコロナによる混乱もあり、サプライチェーンの「脱中国化」が進んでいます。もちろん完全撤退ではなく一部撤退しリスクを分散させるという企業も多いですが、「脱中国化」の流れはしばらく続き、物流量は減るのではないかと予想されているのです。
そういう訳でインフラ整備も期待できないので、物流量が減るまでは港の混雑は続き、当分は海上運賃も高い状態が続くと考えられます。


※次月のテーマは「船社の新造船/配船の動向」を予定しております。お楽しみに♪