国際南北輸送回廊(INSTC)の進捗はどうなった?

国際南北輸送回廊の構想はどうなったのか?

国際南北輸送回廊(INSTC)とは、2002年から構想が進められている、インドのムンバイとロシアのモスクワを結ぶ全長約7,200kmの複合輸送網(鉄道・道路・海路を組み合わせたもの)です。
このルートは主にインド、イラン、アゼルバイジャン、ロシアの4カ国を経由し、従来の欧州経由ルートに比べて輸送時間とコストの大幅な削減が期待されています。
ただし、構想から20年以上が経過した現在も、全ルートの整備・運用は完了しておらず、実現には課題が残っています。
今回は、この国際南北輸送回廊をめぐって近年注目された動きを整理します。

チャーバハール港を南北輸送回廊の新たな経由港として採用!

以下の地図に示すように、従来の国際南北輸送回廊はイランのバンダレ・アッバース港を経由するルートが想定されていましたが、近年ではチャーバハール港を経由する構想へとシフトしつつあります。
これは、チャーバハール港が地理的にペルシャ湾を通らずにアクセス可能な位置にあり、バンダレ・アッバース港を利用するよりもスムーズな輸送が期待できるためです。
チャーバハール港は、インド・イラン・アフガニスタンの三国協力のもとで整備が進められていると報じられています。


2024年6月24日、ロシア国営鉄道会社は「ロシアで初めて、国際南北輸送回廊を経由してクズバスの石炭をインドに輸送した」と発表しました。
この輸送には約23日を要し、従来のスエズ運河経由(約45日)と比べて、大幅に短縮されたとしています。
また、このルートを通じた貨物輸送量は、今後7年間で3倍に増加する見込みであるとも報じられています。

その後、定期便の開始などに関する公式な発表はまだありませんが、国際南北輸送回廊が正式に運用されるようになれば、ロシア・イラン・インドに加え、中東の加盟国が多いBRICS内での交流がさらに活発になると考えられます。

なお、インド、サウジアラビア、UAE、アメリカを含むG20パートナーによって推進されている「インド・中東・欧州経済回廊(IMEC)」の構想もありますが、イスラエル情勢が安定するまでは進展は難しいと見られています。

今後も、国際南北輸送回廊の進捗については定期的に取り上げていく予定です。

※大谷シッピングでは、ロシア、インド、中東、アフリカや欧州への海上輸送も積極的に取り扱っています。多数の実績がありますので、ご入用の際はぜひお問い合わせください。