米国の相互関税発表でどう変わる?G7とBRICSの経済規模を比較
トランプ政権、相互関税を発表 G7・BRICS各国への影響は?
2025年4月2日、以前より予告されていたとおり、トランプ大統領が相互関税を発表しました。後に各国と交渉するために90日の猶予期間を設けると発表され、為替市場は一時的に落ち着きましたが、交渉次第では再び混乱する懸念は否めません。
トランプ大統領の説明によると、今回の相互関税の利率は、各国との貿易の不平等を解消するためのものであり、国別に利率が発表されました。
今回は、G7およびBRICS各国について、米国が発表した税率の違いをそれぞれ確認していきます。
また、近年、G7と対立構造を強めつつあるBRICSですが、実際の輸出入額を比較すると、どちらの経済規模が大きいのでしょうか。TrendEconomyのウェブサイトで公開されている2023年の貿易データを基に、G7とBRICS各国の輸出・輸入額も合わせて比較していきたいと考えています。
なお、当初の発表では、2024年1月にエジプト、エチオピア、サウジアラビア、UAE、イラン、アルゼンチンの6カ国が新たに加わり「BRICSプラス」となる予定でしたが、アルゼンチンは加盟を見送り、最終的に5カ国が加盟しました。
今回は2023年の貿易データを参照し、G7と、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ、エジプト、エチオピア、サウジアラビア、UAE、イラン)を比較対象とします。
米発表の相互関税並びに2023年の輸出輸入額を比較
まずはG7の7カ国の貿易額とコンテナ取扱量は以下です。
カナダに関しては今回の相互関税の対象国ではありませんが、それはすでに25%の関税をかけていたためとされています。
■2023年のG7各国の貿易輸出入額と、年間コンテナ取扱量
G7国名 | 当初発表された米との相互関税の税率 | 輸出額(百万US$) | 輸入額(百万US$) | 輸出入差引額(百万US$) |
米国 | - | 2,020,606 | 3,172,476 | -1,151,870 |
ドイツ | 20% | 1,718,251 | 1,476,656 | 241,595 |
日本 | 24% | 717,261 | 785,796 | -68,535 |
イタリア | 20% | 676,993 | 639,755 | 37,238 |
フランス | 20% | 648,569 | 786,158 | -137,589 |
カナダ | - (※以前から25%) | 568,939 | 570,484 | -1,545 |
イギリス | 10% | 521,040 | 791,523 | -270,483 |
G7合計 | - | 6,871,659 | 8,222,848 | -1,351,189 |
次にBRICS10カ国の貿易額とコンテナ取扱量は以下です。
中国に関しては4月2日時点では34%と発表されましたがのちに125%とされ、まだ交渉中のため今後も変動のするとされているようです。
■2023年のBRICS各国の貿易輸出入額と、年間コンテナ取扱量
BRICS国名 | 当初発表された米との相互関税の税率 | 輸出額 (百万US$) | 輸入額 (百万US$) | 輸出入差引額 (百万US$) |
中国 | 34% (のちに125%※2025 4/25時点) | 3,379,255 | 2,556,565 | 822,690 |
ロシア | 対象外 (理由:米と取引皆無) | 424,222 | 303,297 | 120,925 |
インド | 26% | 431,574 | 672,231 | -240,657 |
ブラジル | 10% | 339,696 | 252,710 | 86,986 |
南アフリカ | 30% | 110,855 | 130,747 | -19,892 |
イラン | 10% | 97,357 | 66,058 | 31,299 |
エジプト | 10% | 42,081 | 83,189 | -41,108 |
アラブ首長国連邦 | 10% | 485,706 | 468,302 | 17,404 |
エチオピア | 10% | 3,616 | 17,888 | -14,272 |
インドネシア | 32% | 258,857 | 221,886 | 36,971 |
BRICS合計 | - | 5,573,219 | 4,772,873 | 800,346 |
まず、相互関税に関してG7とBRICSで差があるかというと、現時点では特に関係なさそうです。
基本的には、米国が貿易黒字となっている国には軽い関税が、貿易赤字となっている国に対しては高い関税が適用される傾向にあるようです。
ただし、BRICSに加盟しなかったアルゼンチンに対して相互関税が適用されなかったことや、ロシアに関しては「取引がない」という理由で関税が適用されていないことを考えると、中国を中心とするBRICSへの何らかの牽制が含まれている可能性も考えられます。
また、2023年の輸出入差引額を見ると、G7側で貿易黒字となっているのはドイツとイタリアの2カ国のみでした。
一方、BRICS側では、中国、ロシア、ブラジル、イラン、アラブ首長国連邦、インドネシアの5カ国が黒字となっており、BRICS全体でも貿易黒字となっています。
この傾向は2024年も続くとみられますが、2025年に導入された相互関税によって、大勢が大きく変わる可能性もあります。
今後、G7全体が貿易黒字化するのか、それともアメリカだけが抜け出す形になるのか――
そのあたりについては、データが出そろい次第、あらためてレポートしていきます。
※大谷シッピングでは、アメリカ、中央アメリカ、中国、インド、中東、アフリカや欧州への海上輸送も積極的に取り扱っています。多数の実績がありますので、ご入用の際はぜひお問い合わせください。